2011年04月21日

 次男の受験の為に12月以来休んでいた宿の試食会を再開しました。暫く人様に出す料理から遠ざかっていたので緊張しました。家族に出す料理は時々作っていましたが、コースで出すメニューと違い、どうしても甘い態度になっていました。ただ、料理の勘だけは鈍らないようにと台所に立っていたのでしたが、人様に出す料理とは心持ちから意気込みから違ってくるのは、第24回目のメニューを作成する段階から感じていました。家族に出す料理も相当厳しい批評を受けていましたが、身内の中では主観的な評価の域を出ません。しかしながら、久々に日程と招待するお客様が決まると体に意欲と緊張感と不安が溢れてきます。試食会の10日位前から出す料理の試作品作りをします。味や盛りつけを家内と事前に検討するためです。この段階で二人が納得しないと消えていくレシピもあれば、味の調整とアレンジ等を加え再工夫をして当日のメニューに載ります。約4ヶ月ぶりの試食会でしたが、前日から自分でも体が動くのが分かりました。前回も約1年ほど間をおいて再開したときには体が料理の勘を忘れていて困りましたが、今回は体が覚えているのを自分でも分かり安堵しました。

 秋の終わりくらいからイタリアンを中心としたメニューから、和食に重きを置いた料理に内容を変更するようにしていました。和食を食べたいとおっしゃる多くのお客様の声を尊重した変更でした。大学に行ってる二人の息子は、和食に変更することに不満を持っていましたが、宿のお客様の嗜好は和食がやはり圧倒的に多いようです。もちろん、前菜の中には和だけでなくイタリアンもエスニックもお出しするつもりですが、メインは和食の流れになります。和食を最初からやらなかったのは、板前さんの修業もしたことのない自分には作れるはずがないと思っていましたし、今でも和食の繊細さ素材重視の料理には敬服せざるを得ません。その和食の厳しさを知った中で、和食の方向性を持って進むのは容易ではないことは充分承知しています。プロの料理人さんからは何を子供だましみたいな事をとお叱りを受ける事も覚悟の上で、一番だしの取り方から練習を重ねています。和食の味付けは昆布と鰹節の出汁と醤油とみりんと酒との絶妙なバランスです、そのどれかが多すぎても少なすぎても味は立ちませんし、素材の持ち味をいかにして引き出すかが、和の調味の難しいところであり和食たるゆえんでもあるようです。しかしながら、ただ和食の形をした料理をお出しするつもりはありません、この季節にあったタケノコの若竹煮等は季節ものですので必ず一品はお出しするつもりですが、他の料理は斬新な味付けをした料理を出せるように工夫をする予定でおります。幸いに、今回の試食会でお出しした若竹煮の味付けも好評を頂き、和食の道をより以上に精進していきます。

 何はともあれお客様からの色んなアドバイスに助けられています。料理のことだけでなく試食会に参加されたお客様から阿蘇神社近くで、数軒の雑貨の店が集まったすばらしい所があると紹介されていました。宿の打ち合わせの途中に早速訪ねたところ、器や味のある書を書かれる店に出合いました。その店の方から、道中立ち寄った宿の余りの立派さに衝撃を受け太刀打ちできないと、少し夫婦して落ち込んでいた心を慰めて癒していただきました。また、同じ敷地内で寒ざらしを食べさせてくれた、ひなびたお店のおばあさんとの何気ない会話がいつまでも心に残りました。きらびやかに飾られてもいないし、素朴なだけのたたずまいながら、店のご主人の個性溢れた店店でした。そこには、今私たちがもっとも求めていた暖かい温もりが感じられる所でした。そんな温もりをお客様に感じていただける宿に、古天神もしていきたいと励まされる阿蘇のしばしの散策でした。何でも整った立派な宿には出来ませんが、二人でお客様を心を込めておもてなしする温かさだけはどこにも負けない宿にしようと、夫婦で決意を固めながら阿蘇を背に帰途につきました。

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posted by 風のテラス 古天神 at 16:59 | Comment(0) | 風のテラス便り