2015年01月21日

 朝から重い雲に覆われ午後から小雨が降り出し、夕方から夜にかけも雨が降り続くようです。気温が下がっていたら雪になったのでしょうが冷たい雨が降っています。冬は雨ではなく雪にむしろなって欲しいのです。雨はその他の季節、春や夏や秋には似合うのですが冬にはどことなく間が抜けたような天気に思えるのです。冬の午後の青空も空気が澄んでいるために寒くはあるのですが、どこまでも突き抜けたような青空が広がります。山の稜線にクヌギ等の木立が立ち並び、その上の澄み切った冬の青空には寒さを忘れさせる程のものがありました。しかし、気温がゆるみ雨となりました。雨雲はすべての視界を遮り内向させてしまいます。もちろん行動も制約されますし、自ずと雨に降り込められた世界と向き合うしかありません。飛び回っていた小鳥たちも羽を休めて雨宿りをしているようです。もっと気温の高い時の雨ならば少々濡れてもそう気にはなりませんが、冬の雨は体に障ります。やはり、冬は雪が似合うのです。雪ならば何故か外に出たくなるのです。気温が零下に下がっていても外に出たくなります。雪はやはり、日常の暮らしを一時的に覆い隠す、非日常へと誘う特異な気候現象なのかも知れません。雪が降ると不思議と雪を触らなくては済まない衝動に駆り立てられます。雪が冷たいのは分かっていても、冷たさに触れて自分の存在の証を無意識に確かめているような気がします。もしくは雪が降ると普段は眠っている大人の顔として背伸びした疲れを解放して、童心を取り戻し、つかの間の子供の無邪気さに心を遊ばせ、元気を養っているのかも知れません。

 年末年始の数日間はおかげさまで満室での営業をさせていただきました。ただ年末寒波が全国を襲いここ小国でも30日から2日までの4日間とも雪になり、気温も連日零下の寒さとなりました。、宿の横の駐車場は積雪のため使えず、上の空き地を時松さんからお借りして臨時駐車場にさせていただいて、私の車で上と下の送迎をしました。この時期は全国的に荒れた雪の年末年始だったのですが、この宿では約15センチ位雪が積もり、その積もった雪が凍ってしまう程に気温が下がりました。この4日間は宿全体が冷凍庫に閉じ込められたような過酷な生活をさせられました。お客様方は雪の多さに来ていただけるかと心配していましたが、ほとんどのお客様は冬装備のタイヤに履き替えられて雪の山道を来ていただきました。感謝の言葉しかございません。本当にありがとうございました。敷地内も雪が残り食事時の本館に上がる凍った石段や、露天までの滑りやすい道でもご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

その後、以前からお世話になっている地元の松平さんから指摘されていた、宿の坂を温泉の湯で溶かしたらいいというアドバイスを早速実行に移し、ファームロードからの入り口近くに雪を溶かすための蛇口を取り付けていただきました。今回のような宿の敷地内が雪で埋められてしまうということはないような対策を取らせていただきましたので、これからの雪でもご安心して滞在できるようになりました。ただ宿までのファームロードは相変わらず除雪がされませんので冬用タイヤでしか通行は不可能となります。

この年末年始は宿が雪に埋もれてしまいましたが、お客様には九州では滅多に見られない雪景色や雪見の露天風呂を堪能していただきました。お客様が喜んでいただけた表情が何よりの励みとなりました。日頃はしない雪かきの肉体作業に疲れ、足場の悪い中での部屋までの案内や、車が動けなくなった方の送迎等いつもとは違う応対に女将を初めスタッフ一同疲れ果ててしまい、4日以降は暫く放心状態でいました。お正月が来たのさえ頭ではわかり、年越しそばを作り、雑煮等も作ってお出ししたのですが、実感がわかずひたすらにお客様のおもてなしに努めていた期間だったようです。12月の中頃から準備を始め仕込みや買い出し等で忙しい前準備を行い、食材等も満室のお客様の分を用意していました。そこまでしていても、天気は何の配慮もすることなく大雪と零下という寒波をももたらしたのです。しかしながら、今となってはあの数日の過酷な雪の年末年始が懐かしく感じられるのです。大変な天気の中のおもてなしだったのですが、お客様には喜んでいただき、また次も来たいと言って帰って行かれたお客様がおられたあの数日間は確かな手応えを感じ取ることが出来た充実した時間だったような気がします。それが今となってはもう既に懐かしく思い出され、このことがサービス業という仕事の良さであり、次につながっていく宿の持つ醍醐味と言えるようです。

 もちろん年末年始が寒くても晴れ渡っていればそれはそれで、正月のめでたさを晴れやかにおもてなしできたと思いますが、もし、雪が降らず雨であったとしたら、あそこまでの充実感やお客様がおっしゃる想い出に残る滞在にはならなかったはずです。6月の雨には紫陽花が似合うように、やはり冬は雪でないと想い出にもドラマにもならないようです。

雪かきや埋もれた笑顔掘り出せる

 湯気立てる雪の露天は湯音のみ

 ピアノ聴く宿の外では夜も雪

27年1月21日
古天神 井崎

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2015年01月18日

谷底に落ちる気配よ月凍る

冬兎轢かれた耳の白さかな

問いただす視線漂い霰降る

薪はじけ独居の眠り深くなる

葉を落とすクヌギ林は星の棲む

冬枯れのクヌギも枝で探し出す

轢かれたる白兎(はくと)の涙凍りゆく

菫らを眠らす野原未だ霜

冬の月背に貼り付けて角曲がる

戸を閉めてより人を恋ふ寒の月

冬灯り探し求めて街を漕ぐ

ゆらゆらと情念の人雪溶かす

枯れ野さえ情念ゆらり焼き尽くす

買い物の籠も寂しげ松の内

言いしれぬ寂しき夜に雪灯り

屠蘇吞まぬ元日となる父居らず

なまこ食ふ正月の朝消えたまま

27年1月18日

古天神  井崎
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2015年01月06日

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今年も時松さん制作の門松
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浮羽の種の隣の注連飾り
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JA朝イチで買った鏡餅
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薪ストーブ
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年末年始は大雪で宿も雪に埋もれました
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お客様には雪の露天を楽しんでいただきました
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宿の番犬 キロロの小屋も雪の中

平成27年1月  

古天神
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