2010年12月26日

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 23日の木曜日、今年最後の打ち合わせに行って来ました。寒波襲来の予報が出ていたので冬支度で出かけましたが、この日まではそんなに寒くなく肩すかしを食ったような、ほっとしたような気分で行って来ました。宿泊棟の外観には表側とサイドには黒のガルバを使い、一部ポイント的に朱のガルバを挿入しアクセントを付けました。残りの大半はモルタルの塗り壁とし、彩色は乾燥してからということで、来年に落ち着いた配色の色を決定します。

 室内は徐々に工事が進んでおり、部屋の空間が整いだしました。本館も外観をどの素材にするか検討し、木質の素材に似せた外壁材を貼ることにしました。壁の色彩は、周りの自然と宿泊棟との配色を調和させる色調にするつもりで、ダークブラウンを選択し、一部にポイントの色を置いたり、モルタルの塗り壁を使う予定です。全体的にシックな渋い大人の宿を目指していますので、ファームロードから下って来られたお客様が視覚的に期待を膨らまされることを目指しています。宿に着かれたときに、まずは宿と本館の外壁に目をやられて想像をあれこれと巡らされ、期待通りなのか予想と違うのかはお客様の想像にお任せして、宿泊棟に入られてからの室内のあつらえは期待に背かない内装にしていく予定です。

 室内に入られてから多分想像ですが、先ほどは内部のことを言いましたが、まっさっきに驚嘆されるのは広い開口をとったテラスからの眺めではないでしょうか。特に何か際だった景色が見えるわけではありません。ただ、山の景色が見えるだけです。その山の景色が遠景としてではなく、身近な、宿泊されたお客様が独り占めされた景色として見ていただけるのです。打ち合わせに行くたびに何かを感じていたのは、他人のような景色ではなく自分のために存在している景色だからだったと、気づいたのでした。

 以前の山は杉が植えられており、山の景色に風情が感じられなかったのです。だから他人のようなよそよそしい景色だったのです。そこを牧野組合さんから譲っていただき、杉を伐採して小国町の森林組合さんに依頼をしてコナラ・クヌギ・もみじ等の落葉広葉樹を植えていただいたのでした。山が明るくなり、山が個性を主張しだしたのです。山もただ一つの樹種ではなく多様な木々を育んでこそ、山に表情が出てくることを発見したのでした。その表情が宿泊棟の広い開口部から目の中に飛び込んでくるのでした。まだ低木で暫くは成長を楽しみに、雑草の山の景色になりそうですが、四季の変化を重ねていくうちにドングリの山になり、樹木と植物と鳥や動物が、そして人間が共生できる山になることを願っているのです。

 A棟で北里さんと打ち合わせを行っているのですが、静かなのです。これまで聞こえていた何かが無いのです。北里さんに言われて気づきました。向こうの山との間を流れている小川の瀬音が聞こえないのです。開口部の広い透明の引き戸を開けると、耳に飛び込んできました。瀬音はペアー硝子の窓に遮断されていたのです。その威力は聞いていましたが驚きました。確かに冬の山の中では夏と違い、瀬音が遮断されて、しーんと静まりかえった景色こそが冬の魅力の一つのようです。

 次回の打ち合わせは次男のセンター試験の済んだ2月となりそうです。
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2010年12月18日

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前回の佐賀の紅葉したもみじの横にレモンの写真があったのをお気づきでしょうか。そんなに黄色く色づいていないので葉の中に隠れて写真では見つけにくくなっていますが、このレモンは大いに活用させてもらっているのです。料理のドレッシング作りにはなくてはならないものだし、冬の風邪の予防のホットレモンとしても重宝しています。

 レモンは今でこそ物産所等で国内産が多く売られていますが、以前はサンキストのアメリカ産しか手に入らなかったものです、販売されている所も限られていましたので珍重品の一つだったかも知れません。レモンのが今のように多く出回らなかった時代のレモンは、多くの柑橘系の中でも何故か特異な存在だったような気がしますがいかがでしょうか。温州ミカンのように茶の間で食べるという果物ではないし、日本料理に使う習慣はないし、日本の生活になかなかとけ込めなかった食材のような気がします。

 これからも、レモンは柑橘系の中では確かな位置を占めるのかどうかは分かりませんが、たくさん生産されていくのは間違いないでしょう。何故ならば、レモンに限らず農産物の国際化が進み、これまでの従来の農産物に飽き足らなくなった消費者や個性的な生産者との需給の一致が背景にあるようです。都会のレストランで先駆的なシェフや板前さん達の目や舌が求めたのであり、それを食するお客様方の味覚が支援させたもののようです。トマトにしてもなすびにしても今までのその形・色の持つ概念を覆すような農産物が続々と出荷され購入されているのです。その善し悪しは別として、食の多様化は豊かな生活を求める人々の帰結であり食の文化の向上のためには通らなければならない道でもあります。

 奇抜な料理法や突飛な食材を使うつもりはありませんが、洒落たセンスのあふれた食材や料理は取り入れるようにしたいと思っております。食の多様化の中で日本の伝統食や郷土食も見直され、注目も集めています。西洋料理全盛のころは日本料理が衰退していき、ファーストフードが流行りだしたら家庭料理が衰退していき、日本食が海外で健康志向ブームとともに注目され初めて、やっとまた日本の料理の素晴らしさに多くの日本人が気づきだしています。その食の多様化の中で伝統食も郷土食も、見直され正月のおせちの良さが見直されるのも間近いはずです。正月には日本の文化が集約されているし、正月料理を囲んで家族が再会し絆を深める、正月ぐらいは慌ただしさから解き放たれてゆったりした時間を楽しみたいものです。

 レモンの事が頭の片隅から離れないのは、大学に進んだおり文学に傾倒していたサークルの1年先輩の狩野さんから、「檸檬」という題名の小説を知っているかと問われ、作品どころかレモンの実物さえ見たこともない田舎出の大学生にとっては衝撃的なことでした。梶井基次郎の作品「檸檬」を読んだことは言うまでもなく、丸善の本棚の上に置いて店から出ていく作品の内容の衝撃性はいつまでも頭の中に残っていました。3年前、私は鳥栖商に転勤して教師最後の3年担任だったおり、はじめて顔を出すクラスの生徒の前の教卓の上に、何も説明をせずにレモンを置きました。レモンから受ける様々な感想を求めたのでしたが、生徒達はどう考えたらいいのか戸惑っていました。私と最初に出会う生徒に、私にとっては最後の担任となる生徒達に、レモンの形状の多様性と特異性を示し、受けてきたこれまでの概念の混乱と新たな発想を期待したのです。

 ちなみに家のレモンは、私が最初に赴任した31年前の高校の最初の3年担任の卒業の記念に生徒や職員に学校から贈られたものです。卒業生はもらったことさえ忘れていましたが、私のは幸いに母が植えてくれていた為に生存しています。私も最初の数年間は忙しくてレモンの存在さえ忘れていました。料理をはじめてからはレモンはなくてはならない存在であり、特異な形状は、事変わったものに惹かれやすい私の生き方をも導いてくれているのかも知れません。

 散り残る名残のもみじの横で、青かったレモン達が、黄色の色を次第に濃くしています。庭の彩りと確かな季節の移行を、特異な形状と色合いでレモンは放ち始めました。
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2010年12月07日

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 12月となり冬らしい気候となりました。ずっと暖かい日が続いていたせいか、庭のもみじの色づきが遅く、また冷気が足らないせいか、一部はすでに枯れ葉になったりと、まだら模様の紅葉となりました。やはり紅葉が美しいのは古天神のような標高の高い寒い地が見事のようです。佐賀でも寒い冬は、結構美しい紅葉が見られるのですが、今年の庭のもみじは期待はずれでした。庭のもみじは、古天神に移植するために数年前から、種から育てていたものです。しかしながら、あまりに大きくたくさん育ってしまい、扱いに困ってしまいました。もみじの周りには桜が植えられており、春と秋にはそれぞれ花や紅葉を楽しめるのですが、落葉樹の枯れ葉の多さには、少々うんざりしています。枯れ葉の戻る場所の「土」をなくしてしまっておきながら、コンクリートの上を舞う枯れ葉を厄介者にするのは、身勝手すぎるのかも知れません。

 佐賀では2年前の秋から北九州の渡辺さん夫妻を第1回として宿の料理のための試食会を始めていました。途中息子達の大学受験のために休止が1年間ほどありましたが、試食会は23回目となりました。まだまだ、やらねばならないことも多く料理の道は厳しいのですが、皆さまから受けた色んなアドバイス・ご教示は本当に助かっております。今後の料理に生かしていきたいと思っております、ありがとうございました。忙しい中、まだ至らない私の料理を食べに来ていただいた事を感謝しております。諸般の事情で、試食会は暫し休みとして、次男のセンター試験終了後に再開したいと思っております。

 試食会は休みとしますが、料理の研究はもちろん続けていくつもりです。2年前はイタリアンを中心とした料理にするつもりでしたが、皆さまの料理に対する意見の大半は和食を食べたいと言うことでした。しかしながら、和食の道は奥が深すぎるし、繊細な味を簡単に出せるものではありません。そのために、私なりに工夫をして食の素材を生かし、かつ洒落た味の食事が出せないか頭を悩ませています。皆さまの良きアドバイスをいただきたいと思っております。この試食会が休みの間は正月のおせちを研究したり、来年の試食会に備えて料理のメニューの検討と料理の実践を重ねていきたいと思っております。22 12 8(水)

 
                            
 
posted by 風のテラス 古天神 at 23:56 | Comment(0) | 風のテラス便り

2010年12月06日

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寒い雨の中12月2日、打ち合わせに行きました。やはり12月の古天神ともなれば、前回の山にあった紅葉はすでに葉を散らし冬の景色に代わっていました。殺風景な冬景色の中にしっとりととけ込んで、落ち着いた宿の壁の色が目の前に現れました。和のモダンな宿にしたいという希望にぴったりの色の壁がついていました。山の色は単色となりました代わりに宿の壁が色づきました。まだ、足場等が残っているので宿全体の外観の様子は1月頃となるようですが、ご期待下さい。設計の北里さんの配色のセンスに感謝しています。雨の寒い中でも大工さんや左官さん達は黙々と着々と仕事を続けられていました。ご苦労様です。

 本館の上では北里さんとこれからの工事の段取りや、熊本のドリームプランの大倉さんと宿泊棟に備える浴衣やアメニティー等の打ち合わせを行い、たくさんのアドバイス等もいただきました。これから宿を経営する者とっては、何もかもが始めてで余りにも用意するもの準備するものややることが多すぎて頭を痛めていたので、大いに助かっています。お客さんのためには可能な限りのサービスや、上質のサービス、多様なプラン等をご提供出来るよう努めていきたいと思っております。

 宿泊棟の内部の工事も徐々に進んでいます。だだ広かった空間に壁が建てられ窓が付き、風呂に浴槽の基礎が付き、次第に部屋らしい間取りが整いつつあります。山と小川の景観を部屋の中から目一杯楽しんでもらうことと、部屋のリビングでゆっくりくつろいでもらうことを重要な宿のコンセプトにしているので、お客様には充分満足していただけるとおもいます。

 車のタイヤをスタットレスに履き替えて、12月中旬に今年最後の打ち合わせに行く予定をしています。そのときには宿泊棟すべてに壁がついているようなので楽しみです。

12月は寒くなる予想ですので、雪が心配ですが、雪もこの古天神では大事な景観の一つ、冬景色の一つと考えています。雪の露天風呂は温泉宿の魅力の一つです。
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 12月に入り、佐賀では気温が下がり、やっと紅葉の本番が始まって街中が色づいています。だから、まだ秋の終わりのような様相で少し寒くなった感じですが、ここ古天神ではもうすでにとっくに紅葉は終わり11月に真っ赤に色づいていたもみじ達はすべての葉を散らして、枝だけの寒々とした冬の木立の様相を見せていました。古天神は冬そのものでした。

 標高が高いため冬の寒さは相当厳しいようです。果たしてマイナス6度にも7度にも下がる気温の中で、宿の仕事が務まるのか不安もあります。暑さにも寒さにも弱い私がここで過ごしていくためには、ここの気温に体を順応させなくてはならないのですが、お客様のために体を動かし続けていくうちに、気づいたときには慣れていたと思えるようにならないかと、淡い期待を抱いております。もっと過酷な、標高千メートルの地でも、人との温かい触れ合いを励みに生活を楽しんでおられる「桃花庵」さんを目標に頑張りたいと思います。

 ただ、冬は他の季節にはない楽しみもあります。静まりかえって何もない窓の外の風景を見ているだけで心の奥のざわつきが収まってくる気がします。見なくてもいい光景を見たり、聞かなくてもいい雑音に囲まれながら生活をしていると、いつの間にか時の流れに流されていたり、心の奥に置かなくてはならない確かなものを失っていくような気がします。

 宿の周りには生活のにおいはほとんどありません。しばし現実の生活から離れて、冷たい空気に体をさらし、疲れた心を蘇生させてゆっくりとくつろいでいただける宿にしたいと思っております。

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