2012年10月19日

すすき

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  コナラの枝の間に三日月

小国の町に至る山道の道沿いには様々な花が咲き誇っています。もう彼岸花は枯れてしまいましたが、まだ赤や黄や白のコスモスの花は咲き並んでいます。自分の庭だけでなく他人の通る道沿いにまで花々を植えて、普通に配慮をしてある気遣いに集落の人々の温かい心意気を感じています。自分の道以外は公的な機関に任せている都会の人とは違う本来の生活のあり方がある気がします。この地での景色も見慣れたものになっているのですが、小国の町まで車を走らせながら、もしくは散歩で宿の近くを歩きながら佐賀とは違うこの風景はどこから来るのかと、佐賀では味わえない山の景色や車の前の景色が気になっていました。

 佐賀では街の景色が現実の生活の一部でしかないのです。長年見慣れて来たというのもありますが、この宿の標高が約700メートル近くあり小国でも400メートル位あります。この標高差を行き来して見る景色は、時に向こうの山々の頂や稜線と同じ所、もしくは山々を眼下にしていたのです。標高の高い所での生活はそういう意識にならずとも普通に俯瞰的な鳥瞰的な位置なのです。毎日の日常の生活は集落では営まれているのですが、やはり現実の生活の時計の進み具合は都会のようには慌ただしくないのです。空に近いところで生活しているために、目の前で見ている景色に現実感がない理由が分かりました。佐賀では鳥たちにしか見られない景色をここでは普通に見ながら、空の上に漂う浮遊感のような感覚で生活していたのです。

 小国での両神社の秋祭りを初めて見学した後に産山の野草園に行って来ました。その道すがら阿蘇山が見えるのです。この秋の季節は空気が一層澄んできて阿蘇山が杵島 烏帽子 中 高 根子岳と連なって見られます。牧草地の遠くの雄大な阿蘇山はやはり風格が違うのです。他の山では余り見られない山全体の姿をいろんな場所からいろんな姿で見せています。時に雲や靄がかかって見えなかったりするのですが、阿蘇山全体が涅槃像のように横たわっている姿は何度見ても感激を通り越してありがたさを感じるのです。あの山の姿に出会えると元気が湧いてくるのです。雄大なカルデラにそびえ立つ阿蘇山の景色はこれまでにも数多の人々に感動を与え続けて来て、観光地としては何も新しくもないのですが太古の昔から人々の視線に関係なくどっかりと横たわっている姿が小さな存在の人間に元気をもたらしてくれるのかも知れません。

 阿蘇山を背景にススキがすくっと立っています。風に穂先を揺らしていますが立ち姿は毅然としています。群れて立つススキの間から阿蘇山が見え隠れしています。阿蘇山が普段は主役を務めていますが、この時期になるといつもは脇役で秋の風物としか見られないススキも、阿蘇山が引き立て役となり秋の主役としての座を努めているのです。季節が変われば脇役にもその座を譲る阿蘇山の包容力。私たちは果たして人生の中で何度の主役を務めるのでしょうか。主役の座が回ってこないうちに舞台から降りることもあるでしょう。脇役のまま、もしくは端役のまま終わるかも知れません。場面と状況が違えばススキのように誰にでも主役の座は回ってくるはずです。しかし、端役や脇役にこそ生き甲斐を見いだしている人も多いようです。そういう人たちには味のある深みのある人生を送っている人もいます。脇役や端役にこそ人生の妙がある、阿蘇山を脇役に置きすくっと毅然と立つススキこそ秋には無くてはならない景色の本当の主役かも知れません。

19日の今宵は南西の方角に三日月があがっています。三日月は宵の空にその存在を次第に際だたせています。夕日が沈むと三日月の明かりと、弧を描くその月の姿には目を引かれます。 ススキも暗がりの中に見えなくなり、夜の主役の登場です。夜の空に描かれる眉引きの月の姿の三日月だから主役になれるのです。コナラの枝を通して浮かぶ三日月を見ながら、望月以外の月の姿は脇役でしかない事が多いのですが、今日のぎりぎりまで細めた三日月の役振りも見事です。場面と状況が違えば誰でも主役になれますし、脇役 端役の妙味も尽きないものがあります。古天神もまだ端役の努めもしていません小さな宿ですが、脇役 端役なりの味を出せるよう女将と共に精進していきます。阿蘇山を従えるススキや夜空の三日月の存在を大きな励みとしつつ・・・

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   薄暮に浮かぶ三日月

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   宿の近くの寺尾野橋からの夕日

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   赤牛の向こうに阿蘇山

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   ススキの向こうに阿蘇山

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平成24年10月19日
古天神 井崎

 

 







posted by 風のテラス 古天神 at 14:22 | Comment(0) | 風のテラス便り
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