2010年12月18日

レモンも色づく

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前回の佐賀の紅葉したもみじの横にレモンの写真があったのをお気づきでしょうか。そんなに黄色く色づいていないので葉の中に隠れて写真では見つけにくくなっていますが、このレモンは大いに活用させてもらっているのです。料理のドレッシング作りにはなくてはならないものだし、冬の風邪の予防のホットレモンとしても重宝しています。

 レモンは今でこそ物産所等で国内産が多く売られていますが、以前はサンキストのアメリカ産しか手に入らなかったものです、販売されている所も限られていましたので珍重品の一つだったかも知れません。レモンのが今のように多く出回らなかった時代のレモンは、多くの柑橘系の中でも何故か特異な存在だったような気がしますがいかがでしょうか。温州ミカンのように茶の間で食べるという果物ではないし、日本料理に使う習慣はないし、日本の生活になかなかとけ込めなかった食材のような気がします。

 これからも、レモンは柑橘系の中では確かな位置を占めるのかどうかは分かりませんが、たくさん生産されていくのは間違いないでしょう。何故ならば、レモンに限らず農産物の国際化が進み、これまでの従来の農産物に飽き足らなくなった消費者や個性的な生産者との需給の一致が背景にあるようです。都会のレストランで先駆的なシェフや板前さん達の目や舌が求めたのであり、それを食するお客様方の味覚が支援させたもののようです。トマトにしてもなすびにしても今までのその形・色の持つ概念を覆すような農産物が続々と出荷され購入されているのです。その善し悪しは別として、食の多様化は豊かな生活を求める人々の帰結であり食の文化の向上のためには通らなければならない道でもあります。

 奇抜な料理法や突飛な食材を使うつもりはありませんが、洒落たセンスのあふれた食材や料理は取り入れるようにしたいと思っております。食の多様化の中で日本の伝統食や郷土食も見直され、注目も集めています。西洋料理全盛のころは日本料理が衰退していき、ファーストフードが流行りだしたら家庭料理が衰退していき、日本食が海外で健康志向ブームとともに注目され初めて、やっとまた日本の料理の素晴らしさに多くの日本人が気づきだしています。その食の多様化の中で伝統食も郷土食も、見直され正月のおせちの良さが見直されるのも間近いはずです。正月には日本の文化が集約されているし、正月料理を囲んで家族が再会し絆を深める、正月ぐらいは慌ただしさから解き放たれてゆったりした時間を楽しみたいものです。

 レモンの事が頭の片隅から離れないのは、大学に進んだおり文学に傾倒していたサークルの1年先輩の狩野さんから、「檸檬」という題名の小説を知っているかと問われ、作品どころかレモンの実物さえ見たこともない田舎出の大学生にとっては衝撃的なことでした。梶井基次郎の作品「檸檬」を読んだことは言うまでもなく、丸善の本棚の上に置いて店から出ていく作品の内容の衝撃性はいつまでも頭の中に残っていました。3年前、私は鳥栖商に転勤して教師最後の3年担任だったおり、はじめて顔を出すクラスの生徒の前の教卓の上に、何も説明をせずにレモンを置きました。レモンから受ける様々な感想を求めたのでしたが、生徒達はどう考えたらいいのか戸惑っていました。私と最初に出会う生徒に、私にとっては最後の担任となる生徒達に、レモンの形状の多様性と特異性を示し、受けてきたこれまでの概念の混乱と新たな発想を期待したのです。

 ちなみに家のレモンは、私が最初に赴任した31年前の高校の最初の3年担任の卒業の記念に生徒や職員に学校から贈られたものです。卒業生はもらったことさえ忘れていましたが、私のは幸いに母が植えてくれていた為に生存しています。私も最初の数年間は忙しくてレモンの存在さえ忘れていました。料理をはじめてからはレモンはなくてはならない存在であり、特異な形状は、事変わったものに惹かれやすい私の生き方をも導いてくれているのかも知れません。

 散り残る名残のもみじの横で、青かったレモン達が、黄色の色を次第に濃くしています。庭の彩りと確かな季節の移行を、特異な形状と色合いでレモンは放ち始めました。
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posted by 風のテラス 古天神 at 15:54 | Comment(0) | 風のテラス便り
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